クロスボーダーM&Aとは?アジア進出の戦略
中小企業の事業承継を始め、スタートアップ、ベンチャー企業におけるM&Aが活発化してきています。
M&Aを活用することは、経営戦略をスピーディーに遂行できる等、とても有効な手段です。
海外企業とのM&Aを、クロスボーダーと呼び、クロスボーダー型のM&Aも活発化してきています。
クロスボーダーM&Aとは?
クロスボーダーM&Aとは、売り手・買い手のどちらかが海外企業であるM&Aを指します。
国内企業が買い手となる場合はIn-out型M&A、海外企業が買い手となる場合はOut-in型M&Aと呼ばれます。クロスボーダーM&Aの件数は増加傾向にあり、その背景には、「少子高齢化による国内市場の縮小」や「企業活動のグローバル化」があげられます。
国ごとに法律や文化、慣習は異なり、その違いを理解した上でクロスボーダーM&Aは実施する必要があります。
クロスボーダーM&Aの目的とは?
日本企業のグローバル化
クロスボーダーM&Aを活用することで、海外進出、海外マーケットの開拓をスピーディーに遂行できます。
海外投資ファンドによる買収
海外の投資ファンドによる日本企業の買収件数も増加しています。
経営難の企業を買収し、経営を回復させることで、莫大な株式の売却益を獲得できるからです。
バリュエーションの特徴
国内企業同士のM&Aと比べ、バリュエーションは困難です。特に発展途上国や新興国が対象の場合、利益が出ていないケースが多い為、市場取引を基準にする「マーケットアプローチ」の手法を用いることが一般的です。しかし、日本の市場と比較して、不確実性が高く、国によっては成長期待値が高いことから20〜30年分の利益がバリュエーションの相場となっている場合もあります。
3つのバリュエーションリスク
カントリーリスク
相手国の情勢によって収益性が変動するリスクです。日本と異なり、政治情勢、経済が不安定な国は数多くあります。クロスボーダーM&Aでは、その国の情勢等を考慮し、バリュエーションを実施する必要があります。
訴訟リスク
日本よりも圧倒的に訴訟を起こしやすい国が存在します。最も顕著なのがアメリカで、損害賠償金も莫大な額となります。訴訟の発生リスクもバリュエーションに反映させる等、対策と準備が必要です。
環境リスク
環境リスクとは、環境汚染の発生によるリスクです。環境保護に厳しい国の場合、土壌汚染等により数億円以上の罰金が発生するケースもあります。M&Aの段階で環境デューデリジェンスを実施しリスクの把握が大切です。
クロスボーダーM&Aの特徴
ブレークアップフィー条項
ブレークアップフィーとは、M&Aの取引が白紙になった時、買い手側から売り手側に支払われる違約金を指します。より有利な条件の相手が現れた場合、その相手との交渉に取り掛かるケースが多く、ブレークアップフィーをあらかじめ定めておくことが重要です。ブレークアップフィーは、売却価格の1~5%程度の価格となります。
デューデリジェンス
また通常のM&Aと比べ、デューデリジェンスの重要性が増すため、実行に多額の費用がかかる点にも注意です。
クロスボーダーM&Aでは、国内M&Aと比較して約1.5倍から2倍もの費用がかかります。
知的財産の取り扱い
特許や商標等の知的財産の取り扱いが、日本とは異なる国も存在します。米国では、特許権は先に発明した人に発生します(日本では先に出願した人)。また、特許の出願や登録に関しても日本とは異なる国も多いです。
M&Aの対価
日本のM&Aでは、クロージングと同時に対価が支払われますが、クロスボーダーM&Aでは、一定期間対価の支払いを留保するケースが多いです。仮に表明保証違反があっても、支払った対価を取り戻すのは困難であるからです。その為エスクロー・エージェントと呼ばれる代理人を活用することがあります。
人材
クロスボーダーM&Aで重要な問題となるのが「人材」です。In-out型M&Aの場合、従業員の反対により、M&Aが円滑に進まないケースがあります。海外企業が日本の従業員をリストラする際、厳しい条件を満たさないと実行できません。日本では、従業員の雇用が最優先だからです。
クロスボーダーM&Aの手法
三角合併
三角合併(2007年に解禁)とは、存続会社が消滅会社に自身の株式を渡す代わりに、親会社の株式を交付する形で行う合併です。つまり、子会社に合併を実行させ、相手企業を子会社化する方法です。
1 外国企業が日本に子会社を設立
2 子会社が親会社(外国企業)の株式を取得
3 親会社株式を買収対象の会社に交付する
ただし三角合併によるクロスボーダーM&Aは株主の同意が大前提となります。
LBO
LBO(Leveraged Buyout)とは、相手企業の保有する資産や将来的な収益力を担保にした上で、M&Aを実施する手法です。相手企業の資産を担保にした上で、買収に必要な資金調達を行います。保有する資金が少ない場合でも、クロスボーダーM&Aを実行できます。ただし、M&A後に業績が悪化した場合、借入金を返済出来なくなるリスクもあり、融資を行う側にとっては高リスクなM&A手法です。その為、融資返済の金利は高くなる傾向があります。債務不履行を回避する手段として、大規模なリストラや資産の売却が実行されるケースもあります。
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