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令和5年度の税制改正大綱の概要を解説!

2022年12月16日(金)に公表された「令和5年度税制改正大綱」の概要を解説します。
※ 税制改正大綱は税制改正の素案であるため、現時点では確定しておりませんので、ご了承くださいませ。

所得税(源泉所得税含む)

1、NISAの抜本的拡充について

令和6年1月より現行の制度を大幅に見直し、制度の改正が行われます。
【ポイント】
✓ 積み立てNISAの年間投資額は40万円から120万円へ。
✓ 一般NISAの年間投資額は120万円から、成長投資枠として240万円へ。
✓ 非課税限度額は、積み立てNISA800万円・一般NISA600万円から、積み立てNISA1800万円・成長投資枠1200万円へ。
✓ 対象商品は、積み立てNISAは一定の投資信託、成長投資枠は上場株式及び投資信託で変わらず。
✓ 対象年齢は18歳以上で変わらず。
✓ 投資期間は、積み立てNISA20年間・一般NISA5年間から、積み立てNISA・成長投資枠共に無制限へ。
【その他のポイント】
✓ ジュニアNISAは2023年で終了予定です。
✓ 限度額の計算は簿価ベースで計算します。また上限に達するまで、出し入れは自由で何度でも利用可となります。
✓ 過去の投資枠とは別枠で利用が可能です。
✓ 適用開始の時期は令和6年1月より

2、スタートアップ企業への再投資にかかる非課税措置の創設について

有価証券取引やM&Aなどで多額の売却益が出た際に、売却資金を元手に創業する場合やエンジェル投資家としてプレシードやシード期のスタートアップに再投資する場合に、再投資金額を株式の売却益から控除する制度が創設されました。
投資額のうち20億円までについては完全に非課税となり、20億円を超えた投資についても投資株式の取得価額から控除をすることで課税の繰り延べが可能となります。
また、エンジェル税制や創業5年未満の会社がストックオプションを発行する場合のストックオプション税制についても一定の要件の緩和が行われます。
【要件とポイント】
✓ 設立以後1年未満であること
✓ 販管費/出資金額が30%を超えること
✓ 株式の99%以上を特定の株主グループが所有していないこと
✓ 大企業の子会社等でないこと

3、所得30億円以上の超富裕層の課税強化について

年間所得が1億円を超える富裕層ほど所得税の負担率が下がる「1億円の壁」の是正措置となります。
年間の合計所得が30億円を超える超富裕層を対象に課税を強化します。
令和7年分の所得から適用予定です。
【要件のポイント】
✓ 上記「2」の投資家が株式の売買で得た利益をスタートアップ(新興企業)に再投資した場合に20億円までは売却益に課税しない優遇措置と併せて調整することが可能です。

4、個人事業者の各種届出等の手続きの簡素化について

個人事業主の各種届出等の手続きが簡素化されます。
【ポイント】
✓ 適用開始時期は、令和8年~令和9年となります。
✓ 事業の開業・廃業時の届出書の様式が統一され、複数の届出書を一括で作成可能になる予定です。
✓ 各種届出書の提出期限を「確定申告まで」とすることで、確定申告書への✓や追記などで届出書の提出が可能になる予定です。
【対象予定の届出書】
✓ 個人事業の開業・廃業届出書
✓ 青色申告承認申請書
✓ 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
✓ 青色申告の取りやめ届出書
✓ 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
✓ 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

5、その他

源泉徴収票の提出方法等の見直しについて
【ポイント】
✓ 源泉徴収票の提出先が市区町村に一本化される予定です。

年末調整関係書類の記載事項の簡略化について
【ポイント】

✓ 扶養控除等申告書や保険料控除等申告書の記載事項が簡略化されます。

資産課税

1、資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築について
【ポイント】

✓ 相続時精算課税制度の使い勝手を向上し、次世代への資産移転を円滑化します。
一方で暦年贈与については、相続対策としての利用が恒常化しており、バランスを取る形で生前贈与加算の期間が延長されます。

相続時精算課税制度について毎年110万円の基礎控除の創設について
【ポイント】

✓ 相続時精算課税制度により行われた贈与について、課税価格から毎年110万円の基礎控除が可能になります。
✓ 相続税の計算において加算される金額も贈与財産の価額から過去の基礎控除額を控除した後の金額となります。

相続時精算課税制度による贈与財産が災害により被害を受けた場合の再計算について
【ポイント】

✓ 精算課税制度による贈与後に、贈与財産である土地や建物が災害によって一定の被害を受けた場合には、相続税の計算において加算される金額は贈与財産の価額から災害を受けた金額を控除した金額とします。

生前贈与加算制度の見直し(加算期間の延長)について
【ポイント】

✓ 暦年贈与により生前に贈与を受けていた財産について、相続時に加算される贈与期間が相続前3年間から相続前「7年間」に延長されます。
✓ 但し、延長した4年間の贈与について「総額100万円までは相続財産に加算しない」措置が取られます。
✓ 延長の期間は令和9年以降の相続から随時延長がされ、令和13年に7年間に達します。
✓ 適用開始時期は令和6年1月以降となります。

2、教育資金や結婚資金等の一括贈与に係る非課税措置の見直しと延長
教育資金の一括贈与に係る非課税措置について
【ポイント】

✓ 適用期限を3年間延長し、契約終了時に残高が残っていた場合にかかってくる贈与税の税率は本則の税率で計算をする事となります。
✓ 契約期間中に贈与者が死亡し、贈与者の相続税の課税価格が5億円を超える場合には、受贈者の年齢に変わらず残高を相続財産に加算する事となります。

結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税措置の見直しについて
【ポイント】

✓ 適用期限を2年間延長し、契約終了時に残高が残っていた場合にかかってくる贈与税の税率は本則の税率で計算をする事となります。

法人課税

1、オープンイノベーション促進税制の拡充について
対象となる特定株式に発行法人からの株式発行以外に既存株主からの購入で一定の要件を満たすものを追加しました。
一方で、取得価額の上限を100億円から50億円に引き下げます。
また、購入から5年以内に一定の成長要件を満たせば減税効果が継続することになります。

オープンイノベーション促進税制とは?
オープンイノベーションを目的としてスタートアップ企業の株式を取得する場合に、取得価額の25%を課税所得から控除できる制度です。
現行制度の詳細は経済産業省の「オープンイノベーション促進税制の概要」を参照ください。

2、研究開発税制の見直しと延長について
研究開発税制は下記の見直しを行います。
【ポイント】
✓ 税額控除率を調整し、試験研究費の増加による控除率のカーブを見直しました。
✓ ビッグデータを活用した「サービス開発」のための試験研究費の範囲として、これまで新たにビッグデータを収集する場合のみが対象でしたが、既存のビッグデータの活用も対象として認められます。
✓ 従来はデザインに基づく「設計・試作」であって性能向上を目的としていなくても試験研究費の対象でしたが、性能向上を目的としないことが明らかな「設計・試作」は対象から除外されます。

3、中小企業投資促進税制等の「見直しと延長」について
中小企業のための優遇税制である中小企業投資促進税制(7%税額控除・30%特別償却)と中小企業経営強化税制(10%税額控除・100%即時償却)の対象財産から一定のコインランドリー設備とマイニング設備が除外されました。

中小企業投資促進税制について
【ポイント】

✓ 中小企業投資促進税制の対象設備からはコインランドリー業(主たる事業でない場合)の機械装置でその管理の大部分を外部に委託しているものを除外することになりました。

中小企業経営強化税制について
【ポイント】
✓ 中小企業経営強化税制の対象設備からはコインランドリー業か暗号通貨マイニング業(主たる事業でない場合)の機械装置でその管理の大部分を外部に委託しているものを除外することになりました。
✓ 中小企業経営強化税制の適用には一定の手続きが必要になるため詳細は中小企業庁のHPを確認してください。
✓ 中小企業庁の「経営サポート 経営強化法による支援」をご参照ください。
✓ 適用開始時期は、令和5年4月1日以降

4、株式交付税制の見直し(同族会社を対象から除外)について
株式交付税制の対象となる株式交付親会社が同族会社(非同族の会社が株主のケースを除く)に該当する場合、税制の適用を受けられなくなります。
【ポイント】
✓ 株式交付税制は、どこの子会社でもない会社(50%支配を受けていない)が対象となります。
✓ 上場前などに一定の状態で資産管理会社を作る際にも株式交付制度の利用が可能でしたが、今回の改正により是正されました。
✓ 適用開始時期は、令和5年10月1日以後

5、暗号資産の評価方法等の見直しについて
暗号資産の発行会社が自社発行の暗号資産を発行時から継続して保有する場合等については、その暗号資産は時価評価から除外される事となりました。

6、特定の資産の買換えの圧縮記帳の見直しと延長について
既成市街地等内から既成市街地等外への買換えが対象から除外されるなど、一定の見直しがされた上で制度が3年間延長されました。

7、DX投資促進税制の見直しと延長について
DX認定基準を改定し、人材促進・確保等に関連する事項を要件化するなど、一定の見直しがされた上で制度が2年間延長されました。

消費税(インボイス制度)

1、小規模事業者に対する納税額に係る負担軽減措置について
一定の小規模事業者であるインボイス発行事業者は、消費税の納付税額を売上に係る消費税額の2割の金額とする事が可能となります。

適用対象事業者について
下記のいずれかに該当するインボイス発行事業者
✓ 免税事業者が適格請求書学校事業者になった場合
✓ 課税事業者選択届出書を提出したことにより課税事業者になっている場合
✓ 基準期間の課税売上高が1000万円以下であるインボイス発行事業者が対象となります。
【ポイント】
✓ 令和5年10月1日より前から課税事業者を選択している場合には、令和5年10月1日の属する課税期間では適用できません。
✓ 課税事業者選択届出書を提出したことで、令和5年10月1日の属する課税期間から課税事業者となる場合には、その課税期間中に選択不適用届出書を提出すれば、課税事業者選択届出書は効力を失います。
✓ 消費税の申告書に適用を受ける旨を付記するだけで適用が可能
✓ 当該特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間中に簡易課税の選択届出書を提出すれば、提出をした課税期間から簡易課税の適用が可能です。
✓ 適用課税期間は、令和5年10月1日~令和8年9月30日までの日の属する課税期間

2、中小事業者等に対する事務負担の軽減措置について
一定の中小事業者は、対価が1万円未満の課税仕入については、インボイスの保存が無くても帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を認めることになります。

適用対象事業者について
下記のいずれかに該当する事業者
✓ 基準期間における課税売上高が1億円以下である
✓ 特定期間における課税売上高が5000万円以下である
✓ 適用時期は、令和5年10月1日~令和11年9月30日までの間に行う課税仕入

3、少額な返還インボイスの交付義務の見直しについて
税込価格が1万円未満の売上返還については、返還インボイスの交付義務が免除ことになります。
✓ 適用開始時期は、令和5年10月1日以後に行う課税資産の譲渡等に係る対価返還が対象

4、登録申請手続の柔軟化について
インボイス制度に係る届出書の提出期限について柔軟化がされました。

免税事業者が登録申請をする場合について
免税事業者が課税期間の初日からインボイス発行事業者として登録を受けようとする場合の提出期限について、現行の課税期間の初日から起算して1月前であったのものが15日前までに緩和されます。

登録の取消しを求める場合について
インボイス発行事業者が登録の取消を求める場合の届出書の提出期限について、取消を受けようとする課税期間の初日から起算して30日前の日の前日であったのものが15日前までに緩和されます。

経過措置により10月1日より後で登録を受けようとする場合について
10月1日より後の日付でインボイス発行事業者の登録を受けようとする場合の登録申請書について、登録を受けようとする日から起算して15日前までに提出していれば、希望日に登録が受けられることになります。

令和5年10月1日からインボイス発行事業者の登録申請を受ける場合の申請期限について
本来の申請期限は令和5年3月31日であるものが、困難な事情がある場合に、令和5年9月30日までの間にその困難な事情を記載して提出し、税務署長により適格請求書発行事業者の登録を受けたときは、令和5年10月1日に登録を受けたこととみなされる措置が設けました。
この措置について、困難な事情の記載が撤廃され、実質的に令和5年9月30日が期限となります。

国際課税

1、グローバルミニマム課税の創設について
多国籍企業グループの総収入金額が7億5000万ユーロ相当以上である場合に、最低税率15%に至るまでの課税がされる仕組みが創設されます。

2、タックスヘイブン税制(CFC税制)の見直しについて
タックスヘイブン税制について下記の見直しがされます。
【ポイント】
✓ 合算課税から免除される特定外国関係会社の租税負担割合の判定が、現行の30%以上から27%以上に引き下げられます。
✓ 申告書に添付する外国関係会社に関する書類で株主関係を記載する書類について、その書類に代えて株主関係図に記載事項を埋めたもので代用が可能になります。

電子帳簿保存制度

1、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度の見直しについて
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について要件の緩和が行われました。

検索要件を不要とする措置
下記のいずれかの場合において、税務調査等の際にデータのダウンロードに応じることが出来る場合には、検索要件を不要とされます。
【ポイント】
✓ 判定期間における売上高が5000万円以下である場合
✓ 出力書面が整然かつ明瞭な状態で、取引年月日や取引先ごとに整理がされている場合

出力書面での保存について猶予措置について
令和4年1月~令和5年12月までの期間については、税務署長がやむを得ない事情があると認め、税務調査等の際に整然かつ明瞭な状態で出力された書面の提示が可能であれば、書面での保存が認められていました。
加えて、電子保管対応が出来ないことに相当の理由があり、データのダウンロードの求めにも応じることが出来るようにしておけば、電子帳簿保存の要件が充足されることになります。
つまり、実質的には、ほぼ紙保管が認められることになります。

優良電子帳簿の範囲の見直しについて
優良電子帳簿の範囲が以前は全ての帳簿でしたが、「その他必要な帳簿」について一定の補助帳簿に限るものとなりました。
具体的には、売上帳、仕入帳、経費帳、売掛帳、買掛帳、手形記入帳、貸付帳、借入帳、未決済項目に係る帳簿、有価証券受け払い簿、固定資産台帳、繰延資産台帳などです。

スキャナ保存制度の見直しについて
国税関係書類について、下記の要件緩和がされることになりました。
✓ 解像度や大きさなどの情報について保存要件が廃止されます。
✓ 入力者等情報の確認要件が廃止されます。
✓ 相互関連性の保持要件が契約書や領収書等の重要書類に限定されます。

その他の納税環境整備

1、高額な無申告に対する無申告加算税の割合の引上げについて
納付すべき税額が300万円を超える場合には、超える部分の無申告加算税の割合を30%に引き上げることになりました。(現行では、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%)
また、更正の予知がない場合の期限後申告等については、300万円を超える部分の無申告加算税の割合を25%に引き上げることになりました。(現行では、50万円までは10%、50万円を超える部分は15%)

2、一定期間繰り返し行われる無申告行為に対する無申告加算税等の加重措置の整備について
3回連続で期限後申告が行われる場合には、無申告加算税を10%加重する措置が取られることになります。

次年度以降に持ち越しされたもの

1、外形標準課税のあり方について
資本金を1億円以下に減資すると外形標準課税の課税から逃れることが出来るため、以前と比べて課税対象となる法人数が3分の2まで減っています。
外形標準課税の対象から外れている実質的な大規模法人については、制度の見直しを今後に検討する方針です。

2、マンションの相続税評価について
マンションについては、市場での売買価格と通達による相続税評価額に大きく乖離が見られるケースがあり、適正化について今後に検討をする方針です。

3、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置について
日本国の防衛力強化を目的として、安定的な財源を確保するために、令和6年以降に適切な時期で下記の内容で措置が講じられる予定です。
【ポイント】
✓ 法人税 法人税額に対して税率4~4.5%の付加税を課す予定です。
✓ 所得税 所得税額に対して税率1%の付加税を課す予定です。
✓ 復興特別所得税 課税期間を延長したうえで、税率を1%引き下げる予定です。
✓ だばこ税は3円/1本相当の引き上げを行う予定です。

以上

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