「相続対策はしていますか?」
こう聞かれると、
「税理士に相談している」
「不動産を持っている」
「毎年、子どもに贈与している」
「生命保険には入っている」
と答える経営者や資産家は少なくないでしょう。
しかし、本当に重要なのは、個別の対策をいくつ実行しているかではありません。
自社株、不動産、現預金、有価証券、生命保険などをすべて合わせた家族全体の総資産を把握したうえで、一次相続・二次相続まで通して分析できているか。
ここが非常に重要です。
「資産10億円」だけでは、相続の姿は見えてこない
たとえば、総資産が10億円ある経営者がいたとします。
一見すれば、十分な資産があります。
しかし、その内訳が、
- 自社株6億円
- 不動産2億円
- 有価証券1億円
- 現預金1億円
だった場合はどうでしょうか。
資産は10億円あっても、相続税を支払うために自由に使える現金は限られます。
自社株や不動産は資産価値があっても、そのままでは納税資金になりません。
さらに、自社株を誰が承継するのか、不動産を誰に渡すのか、他の相続人との公平性をどう確保するのかという問題も生まれます。
つまり、
「いくら持っているか」と「円滑に相続できるか」は、まったく別の問題なのです。
一次相続だけを見ていると、二次相続で想定外が起こる
相続対策でもう一つ見落とされやすいのが、二次相続です。
日本の相続税には配偶者の税額軽減があり、配偶者が取得した遺産について、一定の範囲まで相続税負担を大きく軽減できます。
そのため一次相続だけを見ると、
「できるだけ配偶者に相続させた方が得なのではないか」
と考えたくなります。
しかし、そこで終わりではありません。
その後、配偶者が亡くなれば、今度は子どもたちへの二次相続が発生します。
一次相続では税負担を抑えられても、二次相続まで含めると家族全体の相続税負担が増えるケースもあります。
だからこそ、
一次相続だけではなく、二次相続まで含めたシミュレーションが必要なのです。
自社株・不動産・現預金を「別々」に考えない
オーナー経営者の相続では、さらに自社株の問題があります。
会社が成長するほど自社株評価が高くなり、
「会社は順調なのに、相続が難しくなる」
という現象が起こります。
そのため本来は、
現在の自社株評価はいくらなのか。
将来どこまで上昇する可能性があるのか。
誰に株式を承継するのか。
相続税はいくらになるのか。
納税資金はどこから準備するのか。
他の相続人には何を残すのか。
ここまでを一体で考えなければなりません。
さらに、不動産、有価証券、現預金、生命保険などを組み合わせ、
家族全体のバランスシートを作るような感覚で相続を考える必要があります。
「節税する」だけが資産承継ではない
相続対策というと、どうしても、
「どうすれば相続税を減らせるか」
という議論になりがちです。
もちろん税負担を適正に抑えることは重要です。
しかし、資産承継の本当の目的は、
次世代の手元に、いくら残せるか。
ではないでしょうか。
ここで発想を少し変えてみます。
1億円の資産を8,000万円に圧縮して税金を減らす方法だけではなく、
1億円を将来1億3,000万円、1億5,000万円にして残す方法がないか。
富裕層の資産管理では、この視点も重要になります。
高金利環境が生命保険の役割を変えている
近年、世界の金利環境は大きく変化しています。
米国を中心に長期金利は以前と比べて高い水準で推移しており、外貨建てを中心とした一部の生命保険商品でも、数年前とは異なる条件の商品が登場しています。
生命保険というと、
「万が一に備えるもの」
という印象が強いかもしれません。
しかし富裕層の資産承継では、
保障機能と資産移転機能を組み合わせる金融商品
という側面があります。
特に、日常生活や事業で当面使用する予定のない現預金について、
「そのまま現金で次世代に残すのが本当に最適なのか」
を検討する余地があります。
生命保険は「相続税を減らす道具」だけではない
生命保険には、一定の条件を満たす場合、死亡保険金について
500万円 × 法定相続人の数
という相続税上の非課税限度額があります。
ただし、富裕層にとって生命保険の価値は、この非課税枠だけではありません。
生命保険を活用することで、
- 将来受け取る金額を設計する
- 相続時の現金を準備する
- 相続人ごとの受取額を設計する
- 不動産や自社株を承継する人と、それ以外の相続人との資産配分を調整する
- 長期間使わない現預金に働いてもらう
といった選択肢が生まれます。
つまり生命保険を、
「節税商品」ではなく、「資産承継のためのポートフォリオの一部」
として考えるわけです。
まず保険を選ぶのではない。「分析」が先である
ここで最も重要なことがあります。
それは、
最初から保険商品を選ばないことです。
まず必要なのは分析です。
現在の、
- 現預金
- 有価証券
- 不動産
- 自社株
- 生命保険
- 借入
- 家族構成
- 相続人ごとの承継予定
などを整理します。
そのうえで、
一次相続ではいくら相続税が発生するのか
二次相続まで含めると家族全体でいくらになるのか
誰がいくら納税するのか
自社株を承継する後継者に負担が偏らないか
現在の現預金で納税できるのか
配偶者にどこまで資産を持たせるのが適切なのか
贈与を行う場合、どの程度が適切なのか
といったシミュレーションを行います。
その結果、
「現預金が多すぎる」
「自社株に資産が偏っている」
「二次相続の負担が大きい」
「納税資金が不足する」
などの問題が見えてきます。
そこで初めて、
保険、不動産、贈与、自社株対策などを検討するのです。
贈与も「毎年110万円」で終わらせない
相続対策として有名なのが暦年贈与です。
ただし、
「毎年110万円を贈与しておけばいい」
と単純に考えるのも適切とは限りません。
現在の制度では、暦年課税による贈与財産について、相続財産への加算対象期間が段階的に最長7年へ拡大されています。
また、資産額や相続税率によっては、
110万円を超えて贈与税を支払いながら贈与した方が、家族全体の税負担を抑えられる場合もあります。
逆に、贈与しすぎることで別の問題が生じるケースもあります。
だからこそ、
「いくら贈与するのが最適なのか」もシミュレーションする必要があります。
相続対策に万能な数字はありません。
高金利だからこそ、検討できることがある
生命保険の条件は、市場金利の影響を受けます。
特に外貨建て保険では、高金利環境によって、以前より魅力的な予定利率・基準利率が設定されるケースがあります。
そのため、数年前に生命保険を検討して、
「それほどメリットを感じなかった」
という方であっても、現在の条件では結果が変わる可能性があります。
一方で、外貨建て商品には為替変動リスクがあります。
途中解約時には市場金利の変動による影響を受ける商品もあり、手数料や契約条件も商品によって異なります。
したがって、
「金利が高いから保険を買う」のではなく、資産全体を分析した結果として、その人に適している場合に活用する。
これが大前提です。
富裕層ほど「部分最適」が危険になる
資産規模が大きくなればなるほど、
税理士は税務。
証券会社は有価証券。
銀行は融資。
不動産会社は不動産。
保険会社は生命保険。
と、それぞれの専門家からさまざまな提案を受けるようになります。
しかし問題は、
家族全体の資産を横断して見ている人がいない
というケースです。
個々の提案は正しくても、全体として最適とは限りません。
だからこそ富裕層やオーナー経営者ほど、一度、
「我が家の資産承継は、このままで本当に大丈夫なのか」
を数字で確認する価値があります。
「いくら税金を減らすか」から「いくら家族に残すか」へ
相続対策は、税金を減らす競争ではありません。
会社を成長させて築いた資産。
長年守ってきた不動産。
積み上げてきた現預金。
それらを、
誰に、どのように、どれだけ残すのか。
そして、
相続税を支払った後に、家族の手元にいくら残るのか。
そこまで考えて初めて、本当の資産承継になります。
金利環境が大きく変化している今だからこそ、
「昔検討したから」
「税理士に任せているから」
「保険にはすでに入っているから」
で終わらせず、
現在の総資産を改めて分析してみる。
その結果として、
現預金、不動産、自社株、有価証券、生命保険をどのように組み合わせるべきなのか。
一度検討してみる価値はあるのではないでしょうか。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・保険商品の勧誘、税務・投資助言を目的とするものではありません。生命保険、贈与、相続、資産運用等については、個々の資産状況・家族構成・税務状況等により適切な方法が異なります。税理士、保険募集人、金融商品取引業者その他の専門家へご相談ください。
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