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事例:議決権信託により、遺留分に関係なく会社の議決権を後継者に譲る方法

会社の議決権は100%長男Bに譲りたいが、遺留分が障害になっている。

A社長は、会社の株式100%を保有しています。
長男Bが会社を継ぐ予定で、早めに自社株式を贈与したいと考えています。
しかし、自社株式の全てを長男Bへ贈与してしまうと、長女Cには、相続させる財産がありません。
このまま贈与してしまうと、長男Bと長女Cは揉めることになるのではないか…。
自社株式を譲るに譲れず、何もできないまま、時間だけが過ぎていきました。

贈与財産も遺留分減殺請求の対象となる

A社長は知人のX社長に相談しました。
すると、その社長も同じような悩みを経験したことがあり、相続財産のほとんどが自社株式の場合、その全てを一人の子供に贈与してしまうと、子供たちの中で揉める可能性があるというのです。

今回のようにA社長と長男Bが共に、遺留分権利者に損害を加えることを知っていながら贈与をした場合、相続開始前10年超の期間に贈与した財産も遺留分減殺請求の対象となるのです。(改正民法第1044条1項及び3項)。

どうすればいいのかと頭を抱えるA社長に、X社長は税理士の満重先生を紹介しました。

議決権信託の活用により解決

話を聞いた税理士の満重先生は、信託を活用した対策を提案しました。
贈与ではなく信託により、株式の名義を全て長男Bとします。
これにより、議決権については長男Bが行使することが可能となります。
さらに、受益権(配当を得る権利や残余財産を得る権利、株式の譲渡対価を得る権利など)については、長男Bと長女Cに2分の1ずつ帰属するよう、信託を使って設計することが可能となるのです。

A社長はさっそく、手続きを進めました。ほどなくして、議決権は長男Bが全て行使できることになり、会社の円滑な意思決定が可能となりました。

議決権信託とは

今回、満重先生が提案した「議決権信託」とは、株主からその所有している株式を、信頼できる者(受託者)に信託譲渡することにより、株式の名義を受託者に変更して、受託者が株主として議決権を行使することをいいます。

議決権信託の特徴は、受託者が株式の所有者として議決権を行使できる一方で、株式の元の所有者は信託の受益者として受益権を有し、今までと同様に配当を受けることができるとともに、残余財産を得る事や、株式の譲渡対価を得る事ができる点にあります。

信託は設計次第で、贈与や相続では難しかった事業承継に対する様々な課題が解決できる場合があります。今回は、その典型的な事例のご紹介でした。

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