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事業再構築補助金のまとめ
2021年7月16日(金)に 衆議院議員第一議員会館にて開催された、中企庁経営支援部長の村上敬亮氏(現内閣官房 IT総合戦略室)登壇の事業再構築補助金情報共有会の内容を行政書士の佐々木 麻理子 先生にまとめて頂きました。
※ 記事につきましては、あくまでも佐々木先生による個人的・主観的なまとめを共有させて頂いておりますことご了承ください。
事業再構築補助金の趣旨
アトキンソン氏の主張する「日本経済低迷の原因は、中小企業の低生産性にある。統計的にも企業規模と生産性には相関関係あり。企業統合や最低賃金の引き上げなどやや強制的な方法を用いてでも、企業規模の拡大を図り、生産性の高い企業を育てるべき」を実現することが目的となっている。
Scale Up と Power Up
企業規模と生産性に一定の相関があることは事実。中小企業が今後、生産性を向上していくにはScale UpまたはPower Upが不可欠である。但し、どちらも企業により向き不向きがあるため、その活用の狙いや目的はそれぞれの企業タイプに応じて、別々のところを見て動くべきである。
Scale Up型企業とPower Up型企業では、共用できる施策も含めそれぞれに向けた政策パッケージを用意し、その活用の方向性を積極的に説明すべきではないかと考えている。
中小企業経営者の視点
多くの経営者が目の前にある取引先からの発注を追いかけてきたのが実態ではないか。その結果、中小企業政策も、目指すところが曖昧なまま漫然と使われてきた面があると思われる。高度成長期は終わり、これからは人口減少局面に入るため国内市場規模が縮小していく。今後の企業の成長を考えるに、事業の再構築や方向性、魅力の「見える化」は不可欠。今回の補助金を通じ、経営コンサルや事業計画の策定のプロである認定支援機関と壁打ちをし、自社の課題や今後の方向性を補助金の趣旨に沿って明確化することで、より中小企業の発展を促していきたい。
「ただし残念ながら、申請書に付された事業計画の質が非常に高いかというと、そう高いとは言い切れない面があります。このため、動画解説をだしてみましたが、こうしたシンプルな解説が必要になるくらい、まだまだ、経営計画づくりは、多くの中小企業にとって、暗中模索、という状況のように感じました。」(村上氏のFacebookより抜粋)
政策全体のリデザイン
~Swimmy戦略とDXへ~
まずは、従来の縦割り組織を改め、系列的取引関係の解体と再構築を進めることで、新たな切り口から政策と共に中小企業の方向性全体をデザインし直す必要がある。ただ、こうした作業を中小企業一社一社が全て一人で実行していくことは非常に難易度が高い。「固定化されすぎない企業群(古くは産業クラスター論議)のあり方について、あるべき仲間と一緒に、その未来を考える」=Swimmy戦略→これまでの系列的取引関係を強力な親会社がリードするドラゴンにたとえ、そのドラゴンから放り出された小魚たちが、改めてSwimmyを再構成することでより効率的な中小企業のリデザインを図る。
「事業再構築補助制度は、こういうSwimmy型のチャレンジに対して、「束ね」加点という形で優遇措置をとっています。ジョイントベンチャーのようなはっきりした事業組織があるわけではないけれども、複数の事業者が手を組んで、一つの事業計画を実現しようとしている。こうした場合、それぞれの事業者が、一緒に取り組んでいる事業者を登録してくださると審査上加点することとなっており、(以下略)」
(村上氏Facebookより抜粋)
『異なるジャンルや業種の企業がプラットフォームを作り、それを通じて協力体制の元イノベーションを推し進めていく』というストーリーが重要なようです。
資本政策のリデザイン
~Scale Up と Power Up~
事業規模と生産性は一定の相関関係を持つため、成長戦略の基本は、事業戦略はもとより、資金調達が握っている。
Scale Up型企業は、手金第一主義を捨て成長に向けた資本戦略を考える必要がある。従来の融資や補助金などの枠にとらわれず、個人投資家などの潜在的に存在している応援団(=投資家)に響くようなデザイン的経営センスでの会社の将来を想像する作業をして頂きたい。
Power Up組の企業群は、「選択と集中」された一つの事業戦略の下、参加する事業者群の生産性を高める方向に自らの事業をシフトしていく必要がある。つまり新たな戦略のために仲間を探し地域に比較優位をもたらすビジネスモデルをみんなで作るべく、それぞれが得意な部分を持ち寄って戦うという戦略が挙げられる。
ex. 新たなまちづくり、観光ビジネスとDMO、地域資源(地域産品)市場の開拓と地域商社、ものづくり企業の集団市場開拓や集団DXなど…、地域経済の活性化、地方創生においてもPower Up組の力において資産を集約することにより、より資産収益率の最大化を図る必要がある。
佐々木先生による個人的・主観的なまとめ
・資本やノウハウを集約して生産性を向上させる。
・補助金に頼り過ぎないように。補助金ありきの計画はほぼ頓挫してしまう。
・四方八方に事業を進めず、前を向く。
・目の前のことに追われていないで、中長期計画を立てなさい。
・まずはプロと組んで事業計画を作成し、事業内容を可視化しなさい。
・現状のままでは日本は沈む船。意識改革が必要。
【公式】事業再構築補助金事務局 YouTube(中小企業庁HPへ)
【質疑応答】
Q、従業員を絞って利益率を上げる選択はアリか?
A、アリ。全体の売上を下げて10%要件を満たすことは問題ない。但し従業員の削減を計画している場合は、解雇した従業員の面倒をどう見るかということも事業計画に反映することが必要。
Q、3次の締切は?
A、9月中のどこか。
Q、3次の特別枠は?
A、2次の特別枠の出方を見てこれから判断するところ。(個人的には出るのではないかと予想)
Q、3次は大きな制度変更はあるか?
A、審査基準は少し手を入れ、前向きな申請を引き出しやすいような考え方などを打ち出そうと思っている。それに沿った事業計画書は政策点がつきやすいよう配慮。(2次と3次のリリースに間が空いているのはその調整のため)
Q、賃上げは加点項目となるか?
A、賃上げだけでは加点項目にならない見込み。政策誘導はあるが、賃金を上げたからと言って大きく評価が変わるということはない。あくまで努力義務。
Q、固定費と協力金の証明書類の変更はあるか?
(コールセンターも言ってることが違いすぎて現場が混乱していたので確認)
A、幾つか添付書類で批判が出ていることは認識しているが、村上氏に上がってくる話ではなかったので事務局に確認するそうです。すごく良い計画なのに添付書類の不備で不採択となった事例も目にしたので、なるべく添付書類については簡素化したいとのこと。
Q、不採択理由が主観的すぎではないか?
(コロナは収束するなど)
A、確率論で割り切るしかない。1件当たり3人以上のチェックが入る態勢を作っているのでなるべく標準偏差に乗るようにはしている。事務方の限界値もある。最後は純粋に点数で決めているのでご理解いただきたい。
以上
佐々木先生 情報共有を頂き誠にありがとうございます。
タグ:佐々木 麻理子 行政書士(白百合行政書士事務所代表)より情報提供
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